2006 年
3 月
6 日
カテゴリ:活動報告
生きた川の創る風景を愛でるヨーロッパの思想と、三角島の現状
〜さわやか早苗日記387〜
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昨日5日に安曇野市明科にある自然交流センター『せせらぎ』で「あづみの早春・水辺のつどい〜万水川、三川合流付近の自然と魅力」が開かれた。せせらぎは、白鳥飛来地として有名な犀川・御法田遊水池や、ニジマスの養魚場がある湧水の小川の脇にある。 主催は、「あづみの森と水と人ネットワーク」という市民グループとあおぞら。 前半は、市民がボランティアで行った、水車小屋付近の万水川から犀川までのラフティング(ゴムボートでの川下り)体験や、遊水池での野鳥観察会を、子どもから大人まで楽しんだ。 後半は、せせらぎ館内での学習会、フリージャーナリストで大学講師の保屋野初子氏の『川は生きている』などの講演を、スライドを見ながら熱心に聞いた。 保屋野さんはヨーロッパや日本の川を、水や森と社会との関わりや、風景という観点で見つめてきた。主な著書に『川とヨーロッパ〜河川再自然化という思想』『緑のダム〜森林・河川・水循環・防災』がある。 保屋野さんの話によると、ドイツでは懐かしい水辺の原風景を取り戻したいと、堤防の一部を壊して、もともと水が流れた場所(氾濫原の森)に、水を入れている。このようにして、人工的に氾濫をおこす事で、出水時の水の勢いを柔らげると同時に、昔ながらの水辺の風景と多様な生物が戻って来た。 大都市ミュンヘンにあるイザール川の中には、日本の都市にあるように川を堤防で囲って(固めて)直線的に流すのではなくて、曲がりくねる事の出来る自由な川の姿を取り戻そうという場所がある。そこには、瀬や淵、砂州、死んだ植物の溜まり(流木、植物のゴミ)、生きている植物(草、低木、森)、そこに棲む様々な生き物が見られ、『生きている川の姿』がある。その風景をヨーロッパの人々は美しいと感じている。 オーストリアでは、堤防で囲ってしまったドナウ川で、堤防の一部を壊し、少しだけ溢れ出るようにして自然に戻す事でできた、氾濫原の森を国立公園にしてしまった。 そして、これらの思想を研究しリードしたのは、『WWF氾濫原研究所』という、民間のNGO組織だ。
これに対して日本の川はどうだろう。 保屋野さんは、「岐阜県の馬瀬川(旧馬瀬村、現在は下呂市)では、川の景観を主としたまちづくりをし、年間5万人ものつり客や観光客が訪れる事例」や、「静岡県三島市の湧水の川・柿田川では、緑のトラストで原風景を守っている事例」、「三島市境川では、住宅地の間にある遊水池を、トンボの生息に最適の場所として残すことを目的にトンボ公園にした事例」を紹介した。どれも市民の願いで復活させたり、守って来た風景だ。 しかし、これはごくまれな事例で、日本のほとんどの川の風景は、コンクリート等の公共事業によって、あるいは景観配慮と称した近自然工法の護岸や親水公園によって、固められているもの。ヨーロッパ人の美意識の中にある『生きている川』がつくる風景からは、ほど遠い風景の川が殆どだ。 最後に見た、石積みの護岸と、川底も石で固められた近自然工法の三面張りの川の写真を見て、会場の皆は思わず大笑い、そして、ため息・・・。
さて、水辺のつどいのを開いたきっかけは、以前の日記(2005, 5/23)にも書いたが、万水川の水車小屋付近や三角島周辺を治水の為に堤防で囲う計画があり、県は地元区だけに意見を聞きながら進めて来たが、ここは、安曇野や長野県、ひいては日本の代表的な景勝地の為、計画をいったん中止した。現在。安曇野市全体に範囲を広げて意見を聞くと、市民から公募して「景観を語る会」を開いている。 堤防は幅7m(法面2m、2m、上に3mの車の通る管理道路)以上のものでないと、国からの補助金が出ない。コンクリートではなく、蛇籠に土をかぶせた近自然工法で造ると建設事務所は説明しているが、そのような大きな堤防で囲んだ風景は三角島にふさわしいのか。観光客のみならず、地元の人もできることならば、手をつけずに残したいと思っているはずだ。 しかし、「(森などの原野と畑の)地権者の権利を守る為に治水の為にはやむを得ない」「国からの補助金が降りない」と説明されて諦めさせられて来た、あるいは「出来るだけ自然に配慮するから」との言葉に仕方なく頷かされて来たのではないかと、保屋野さんの話を聞いて、あらためて思った。
本来、政治は住民の願いを叶える為にある。 千葉県我孫子市では、民間業者による開発の危機にあいながらも、住民運動により守られた自然の宝庫古利根沼を買い取る為に、市民債を募った。すると、国債よりも低い金利であるにもかかわらず、募集額2億円にも係わらず、10億円もの応募があったと言う。投資目的より、かつて自分たちが泳ぎ、魚釣りなどに興じた沼への思いから応募した人が多いとのこと。我孫子市はここを子どもたちの環境教育の場として生かし、沼の周辺の掃除等を行う住民組織「緑のボランティア」と一緒に管理して行くそうだ。 黒澤明監督の映画『夢』の舞台にもなった、万水川水車小屋付近や三角島の保全について、市民の願いを叶えるべく、本来なら安曇野市が、県や市民と一緒に、知恵やズクを出してくれれば良いのに‥‥というのが、水辺のつどいを企画したり、集まった市民の皆さんの感想だった。
あづみの早春・水辺のつどい |
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