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2004 年 11 月 18 日    
長野と群馬県が入り交じった集落、臼田町馬坂 <2>
〜さわやか早苗日記327〜
 (昨日の続き)区長さんは越県合併について、「どこへ行ったって、土地が動くわけでねえ。群馬でも長野でもえらい違いはない。」と言う。
 実は昭和の合併の際に、区長さんは群馬に越県合併したいとのろしを上げたのだそうだ。当時、馬坂住民の85%は越県合併に賛成だった。しかし、「越県は大きな厄介がある。こういうところだから、越県するなら100%の賛成がいる」として、群馬に行くのは思いとどまった。
 更に、区長さんは「いずれにしても合併は反対。役場が遠くなりサービスが悪くなる。中央は良いが、周りのものは恩恵ない」と話した。

 長野県に望む支援は?と尋ねると、冬期に臼田まで容易に出られるよう、トンネルを造ってと望んでいる。「交通が便利になり、交流が盛んにならないと若い人が入ってこない。そうならないことには、はじまらない。すべてはそこから」と区長さんは言う。
 観光施設ぐらいしかない南安曇掘金村の須砂渡に、トンネルをなどというのは税金の無駄使いだが、栄村の秋山郷や馬坂の場合は生活道路だ。しかし、それで本当に過疎は止まるのだろうか?立派な家や見事な石垣の美しい段々畑(写真上)が放置されってしまった未来の光景を思い浮かべると、寂しい。

 馬坂のあと県境にある富士見町蔦木に行き、下蔦木の区長さんに話を聞いた。蔦木では越県して山梨へ行きたいと考えたことはなく、寧ろ、現在子供たちが越県して富士見町の学校に通っている山梨県白州町の富士見寄りの集落の方が、長野県に来たいという冗談話があるそうだ。
 蔦木は国道がすぐ下を通り、小淵沢インターやJRの駅まで車で10分と、交通の便が良い。しかし、高齢化や過疎化は進んで来ていて、交通の便が良ければ過疎にストップがかかるわけではないと思った。また、最近では、若い人が諏訪ではなく元気のよい山梨の会社の方へ働きに行っているそうだ。そのような人たちが蔦木に留まらずに出て行ってしまえば過疎は益々進むだろう。交通の便が良くなれば、よけいボーダレスになる。

 あおぞらの宮川速雄議員が、9月県議会の越県合併に関して行った一般質問で、県境にある地域は常に越県の波に晒されるとして、県境にある地域の一つとして蔦木の名を挙げた、「蔦木は越県など考えたこともない」と、区長さんご夫婦は怒っていた。
 宮川議員の質問趣旨は、蔦木が越県を考えているということではなく、ボーダレス化がどんどん進む今では、この先どうなるかわからない、また国が更に強く強制合併を進めれば、長野県はなくなってしまうという意味だ。
 そういうなかで、私は蔦木の区長さん夫婦のように「山梨へ行きたいなどと思ったことはない」と怒る気持ちや、馬坂のように「越県するなら100%の合意が必要」という気持ちが、実は大事なのではないかと思った。それは、その地域で暮らし、地域を守ってきた人たちの誇りだからだ。
 私は二つの地域を訪れ、なぜ山口村の人たちがいとも簡単に信州・長野県という誇りを捨て、岐阜県に行きたいのか、益々わからなくなった。

 臼田町と南牧村の県境にあった「臼田町馬坂1.4km」という看板(写真下)は、看板がなかった時に長野県から浄化槽の点検に来た人達が、先の方に馬坂部落があるとは思わず帰ってしまった為に、苦情を言うと、県が立ててくれた看板なのだそうだ。「まさか、この先に長野県の集落があるとは思わない、だから、馬坂(まさか)というのかねえ」と、だじゃれを言いながら帰りに看板をもう一度眺めたのは、私達だけではないはずだ。
 そのくらい他県にありながら、長野県を捨てない人たちがいると、わかった。


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