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2005 年 8 月 16 日    
自然の力を封じ込めない、伝統的工法の夜間瀬灌漑頭首工
〜さわやか早苗日記343〜
 7月に県議会農政林務委員会で、山ノ内町・夜間瀬灌漑排水事業の現地調査におとずれた際、事務所に展示してあった頭首工(農業用水を取水するための堰と取水口)の写真が目についた。「自然に配慮してある造りのようですね、今度あらためて見に来させていただいても良いでしょうか?」と尋ねると、事業組合副理事長さんが「良いですよ。実は、1週間前にも穂高町の職員が視察に来ました」と言う。
 
 8月9日に、理事長さん、副理事長さん、北信地方事務所の県職員に案内していただき、車で1時間ほど行った奥志賀の、上信越国立公園内にある取水口や用水路、アースフィルダム(コンクリートを極力使わず造られたダム)を視察した。
 夜間瀬川に水利権を持たない夜間瀬地区は、昔から常に干ばつに苦しんでいたが、今から130年前、分水嶺を超えた雑魚川水系から、手掘りでトンネルや水路を掘って総延長50km以上の堰を造り、水を引いて来た。
 昭和52年から平成6年にかけて、雑魚川支流の7つの沢に取水口を設け、昔掘った3つの堰を統合・改修してパイプライン(上は管理道)にし、ダムまで引き、そこからトンネルを掘って分水嶺を超え、夜間瀬地区まで導水する県営事業を行った。
 事業にあたって、この地域が国立公園内だった事や、氷河期からここに生息するイワナの原種保存区であったために、灌漑事業組合と志賀高原漁協との間で、自然環境保護を念頭に施工するという協定書が交わされた。その内容は、「水質汚濁のないように」「着工前に表土採取をし工事後覆土復元する」「工事の支障となる立ち木も出来る限り伐採しない」「巨石など現場発生材を使う」などである。
 これを実現するために、『志賀方式』と言われる、自然環境の中で土や水等の作用や動植物が相互に果たしている機能を認識し、生かすという工法が用いられた。これは、古くから日本に存在している伝統的な工法である。
 この『志賀方式』は、開発行為と自然保護の妥協点を見いだすなどというものではない。自然の力を借りて目的とする機能の向上も図るもの、自然という人間の力ではどうする事も出来ないものと付き合いながら、天の恵みをいただくという、自然との共存を目指すものだという。

 取水口は、大小で30箇所以上もあった。大きなものはバースクリーン後方取水型という方式で造られ、渓流の急激な流量変動にも安定的な取水が出来、流石や流木にも堅牢、維持管理が容易な構造で、イワナの稚魚の流入を防ぐ工夫がされていた(写真)。
 堅牢さ保持のために石入りのコンクリートでできた堰と、その場で出た巨石が積まれた堤防は、流れに削られている部分もあったが、周りの自然とすっかりとけ込んでいた。造られてからたった十数年とは思えないほど、昔からそこに存在していたような風情で、歴史的な重みのようなものを感じた。
 取水口の横にある、工事の際に水質汚濁のないように造られたバイパスは、完全に埋めてしまわず、大水の際には水路となって、取水口が壊れるのを防ぐ役目を果たしている。脆い地質のために、沢筋の土砂の流出も多く、堰堤に貯まった土砂を取り除くのが大変との事だったが、取水口周りの崩壊は残した木が防いでくれている。
 自然の力を封じ込めるのではなく、上手く逃がしてあげる工夫が、良くなされていて、感心した。穂高町の天満沢頭首工とは、まったく正反対の工法だ。

 安曇野市発足に当たり、市長選と市議会議員の選挙があり、すでに現職(合併前の町村)の何人かが名乗りを上げている。環境保全に『本気で』取り組んでくれる人に、新市の未来は預けたいものだ。(続く)


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