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2007 年 6 月 26 日    
ダム視察<1>地滑りで水の貯められない大滝ダムと無責任な国
〜さわやか早苗日記442〜
 21日に6月定例県議会が始まった。まず一番の争点は『浅川治水専用穴あきダム』になるだろう。
 そこで、県議会に先立ち、2つのダム調査に出かけた。

 まず、17〜18日に、長野市民・県民の皆さんと一緒に、湛水試験中に地滑りの兆候が現れ、集落が全戸移転をせざるを得なくなった、奈良県川上村の『大滝ダム』に出かけた。国交省が浅川ダムと同様に地滑り地帯に無理矢理つくった、未だ水の貯められない問題のダムである。(写真上は、大滝ダム。本来貯められるはずの水位の1/3も水がたまっていない状態である)
 視察バスツアーを企画したところ、全県から37人もの参加者があった。(今後も、このバスツアーをきっかけに『信州ラプソディ』という名称で、浅川問題や公共事業のあり方、税金の使われ方について、県政の問題点を指摘、提言して行くことになった。)
 次に、19〜20日に、治水の専門家で工学博士の京都大学名誉教授・今本博健氏と、水問題の専門家でジャーナリストの保屋野初子氏と一緒に、島根県益田市の『益田川ダム』の調査に出かけた。
 環境破壊・税金の無駄遣いと、「脱ダム宣言」以降、高まって来たダムへの批判をかわすために、国交省は環境に優しく費用も安いなどとうたって、治水のみを目的とし、普段は水が貯まらないよう河道付近に穴のある「治水専用穴あきダム」を、いわば、ダム建設推進派の生き残り策として日本全国に造ろうとしている。『益田川ダム』ダムは、いわばその第1号だ。この流れで、浅川ダムも多くの疑問や批判があるにもかかわらず、無理矢理造ろうとしていることは間違いない。
 (今本氏はこの問題点を、今月発売された『世界』7月号で指摘し、保屋野氏も同誌で、ダムの堆砂による海岸浸食という大問題を指摘している。)

 大滝ダムでは、湛水後に地割れなどの地滑り兆候が現れ、全戸移転となった白屋集落の井阪区長の案内で、廃村となった集落跡を視察し、少し離れたところに国が設置したプレハブの仮設集会所でお話を聞いた。(写真下、井阪区長。マイクを持って説明しているのは、浅川ダム問題などをずっとを追及してきた内山さん。向こう側に見えるのが白屋集落)
 井阪区長によると、白屋地区では、浅川ダムと同じく、大滝ダム計画段階から湛水による地滑りの危険性を指摘してきた。また、白屋住民が費用を出して、2人の学者に地質調査を行なってもらったところ、1974年に「ダムにより地滑りが拡大される。白屋地区の地滑りは必至であり、防止できない。移転するしかない」との報告があった。そこで、白屋集落ではダムに反対、また、仮にダムを強行するなら、水没地域ではないため移転対象になっていない白屋も移転対象にするべきと主張した。
 ところが、国は大丈夫だと言い、白屋地区住民の訴えを無視してダム計画を推進、88年にはダム本体工事に着手、2002年にダムが完成した。
 しかし、2003年3月に試験湛水を開始したところ、4月には、井阪区長ら白屋地区住民の指摘通り、地区内で地滑り(亀裂)が発生した。それにもかかわらず、国が「地滑り亀裂の発生は試験湛水が原因」と認めて、水位を下げ始めたのは8月になってから。白屋住民は7月に別地区の小学校跡地の仮設住宅に移転していたが、結局ここに3年以上も暮らすことに。昨年になって、やっと移転できた。
 無責任な国の姿勢や対応により、白屋地区住民の苦悩は想像を超えるものであり、私たちに説明して下さった区長さんは、こみ上げて来る怒りが抑えきれずに、吹き出すように話された。
 この辺りは、吉野川(紀ノ川)に沿って集落が点在し、しかも急峻な山の斜面が昔すべってできた緩斜面に、殆どの集落がある。この緩斜面は一応安定しており、白屋集落も800年も続いてきた。ところが、地滑り地形には変わりなく、何かのきっかけで動くことがある。今回、ダムによる湛水で斜面下部に地下水が浸透し浮くような形になり、斜面上部から下部までの大規模な地滑りを起こす、亀裂が発生してしまった。
 800年村の歴史を見守って来た神社も移転せざるを得ない、村(集落)の歴史が、ダムによって終りにさせられてしまったのだ。

 国はこれまでにかかった総工費3250億円の他に、地滑り対策費用(押さえ盛り土などの対策工事と、移転費用など)230億円を新たにつけたが、川上村がまだ約束していない事業費を国に希望したりしたために、白屋地区は村からも孤立、支援してもらえないような形になってしまった。
 また、井阪区長たちは、ダムの湛水が始まれば再び地滑りがどこかで発生しかねない、川上村に住むところはないと考え、橿原市に移住した。白屋地区にあった37戸は、川上村大滝地区に12戸、橿原市に13戸、あとは県外などにと別れ別れの移住となった。
 12戸の移住先の川上村大滝地区は、ダムの真上にある、ダム工事の飯場や資材置き場などの跡地だ。ここが空いているということで、国があっせんした。視察で訪れると真新しい住居に昨年暮れに引っ越して来たばかりという人々が、前の住居から移したという木を植えていた。
 ところが、住民の移転が決まり住宅の建設が始まった頃の昨年春に、再びダムに湛水した場合地滑りの危険があり対策が必要という2カ所の内1つが、「白屋住民12戸が移転した大滝地区」という調査委員会からの報告がなされた。
 何ということだ!井阪区長の言う通り、再び湛水が始まれば、川上村は人の住めない村になり、金くい虫のエンドレス地滑り対策工事の重機の音が響いているような場所になりかねない。

 今でも、無人となった白屋地区の下の河原では、ものすごく大規模な「押さえ盛り土」という地滑り対策工事が行なわれている。これは、ダムに水を貯めるために行なわれているのだ。
 この対策工事のすぐ横には、新しく付け替えた国道と白屋地区を結ぶ立派な橋が架かっていた。この橋は、住民の移転と対策工事用に使われるだけの橋となってしまった。(写真下、橋の下で行なわれているのが、押さえ盛り土などの地滑り対策工事。橋の上に見えるのは白屋集落)

 村井県政は、住民の心配を他所に、再調査もせずに、かつての浅川ダム推進派の学識経験者(御用学者)たちからのお墨付きを貰って、ダム建設を強行しようとしている。これは、川上村大滝ダムと同じ轍を踏む可能性が、十分ある。(次回に続く)

大滝ダムについて(紀ノ川管理事務所)


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