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2007 年 7 月 22 日    
今本氏、これからの『本当に必要な治水』を村井知事に話すが、、
〜さわやか早苗日記447〜
 先日20日(金)に、京都大学名誉教授で河川工学学者の今本博健氏が、長野県を訪れた。目的は、治水について村井知事との会見だった。
 先月県議会前に、雑誌世界7月号に『穴あきダム徹底批判』を書かれた今本氏と一緒に、島根県益田川に治水専用穴あきダム調査に出かけた際、今本氏が「浅川に治水専用穴あきダムを造るようなことは、これからの望ましい治水のあり方からして、大変問題だ。一度、村井知事にお会いし、そのことを率直に話してみたい」と言われた。
 県議会中に、知事室で村井知事に今本氏が会見を望んでいることを、伝えてみた。今本氏は、ダム推進論者ではないので、会うと言ってくれるかなあ?と思ったが、村井知事は、あっけなく「いいですよ、会いましょう」と言ってくれた。
 ただし、会うのは会うが、聞き置きだけしておきますで、終る可能性も大。
 それでも、今本氏は村井知事に会うために、わざわざ京都から長野県に来てくださった。私は今本氏に、ぜひ「本当に必要な治水とは何か」を、経験豊富な氏の立場から、村井知事とサシで、短い時間であってもしっかり伝えていただきたいと思い、最初に写真を撮らせて貰っただけで、知事室を出た。村井知事側も、別に頼んだわけではないが、秘書も知事室から出て、今本氏と村井知事の二人だけでの会見が実現した。

 今本氏は、村井知事に話したことをまとめてくださった。
・これまでの治水は、超過洪水への配慮が足りない、計画が達成されるまで住民が危険にさらされる、といった欠陥があるため、抜本的に変える必要がある。
・これからの治水は、いかなる大洪水をも対象として、壊滅的な被害を防ぐことを目標としなければならない。
・今の治水は基本高水に振り回されているが、計画規模を出発点とする基本高水は絶対的なものでない。
 また、浅川ダムについては、
・効果がきわめて小さいと思う。
・中流部には効果があるが、そこでは河道整備が進んでいて、たとえ洪水が溢れることがあっても、大きな被害にはならないと思う。
・とくに懸念されるのが、地すべりである。専門家が大丈夫といった大滝ダムは地すべりで大変なことになっている。一部の専門家だけを信用しては、間違う恐れがある。
 
 会見時間が30分と限られているため(実際は10分程延長、40分の会見となった)今本氏は、「10分ほど河川についての私の考えを説明させてください」とお断りして、準備した説明資料を用いて、説きに説いたそうだ。
 説明が終わると、知事は「ちょっと、資料を読ませてください。」と言い、しっかり資料を読んでくれたとのこと。
 その上で、村井知事は今本氏に、
 「治水では、絶対大丈夫と言い切れるものはない。知事として、つねに最悪を考えて判断するようにしている。」「浅川ダムには、賛成する者と、反対する者とがいる。両者は、お互いに相手のいうことに耳を貸そうとしない。」「白紙の状態から考えるのならともかく、浅川ダムという案がある以上、知事として採用するかしないかを判断せざるを得ない。」「浅川ダムを採用するとしたのは、脱ダムを宣言した前任者に対抗するためではなく、県民の命を預かる者として、必要と判断したからだ。」
と言われたそうだ。

 その後、お互いが意見を言い合ったとのこと。今本氏は専門家の立場から「古い堤防は川の土砂を盛り上げたものが多く、場所によっては細かい砂の場合もあるほどだ。破堤は壊滅的な被害に結びつくから、堤防強化を最優先すべきで、それでもどうしても安全度が不足する場合にはじめてダムが検討の対象になる。」と言うと、知事「一般論として、おっしゃることはよく解る。」
 今本氏「ダムには国からの補助が手厚いから採用したがるのではないか。」知事「私は財政は専門家だ。多目的ダムについては他からの補助があるが、治水専用ダムについてはそうではない。」
 最後に今本氏は、「とにかく地すべりには慎重に再検討する必要があると思う。」と念を押したが、知事の返事はなし。また、今本氏の「検討していると思うが、穴あきダムは穴が詰まると大変なので、予備の穴が必要だ。」という意見に対しては、知事は「検討する。」と答えたとのこと。(予備の穴については、先日の議会一般質問で、議員の質問に対して土木部長もそれらしいことを言っている。)

 終わってから、せっかく遠くから来てくださったので、住民の皆さんとの意見交換も議会等会議室で組ませてもらった。その場で今本氏は、住民の方に知事との会見の報告をしてくださった。
 今本氏は、「知事が私の話を真剣に聞いてくれたことには心から感謝しているが、同時に、'豪も変わらないな'と無力感に陥った。しかし、決して最後まであきらめないと思い直すことにした」とおっしゃった。
 報告の後の住民の皆さんとの意見交換では、「基本高水の決め方が間違っているため、数値が大きすぎるという意見」や、「浅川ダム計画は根本から間違っていて、効果がない」という意見などが出された。これに対して、今本氏は「基本高水の決め方は河川管理者の専決事項で、これまでも、これからも不毛の議論になる」「全く効果がないということではなく、効果が小さいだけではないか」と、反対住民に迎合するのではなく、専門的見地から的確な意見を述べていた。

 今本氏は、「基本高水によるこれまでの治水方法ををやめる」「治水のやり方を変える」ことをやりたいと言う。
 浅川を例に具体的に言えば、ダムは中流域の溢水には確かに多少の効果はあるかもしれないが、環境面や地滑りなどの危険性を考えたら造るべきダムではない。
 万が一溢れても、被害をより少なくする方策をあらかじめとっておくこと、例えば、川に面した家に塀を築く、道路に溢水を流し、その先に流れ込むような堀を造っておく(これは何も浅川の溢水だけでなく、市街地では普段のちょっとした大雨にも有効)。また、堤防や、浅川のような堀込み河川の土手には余裕高があるが、ここまでしっかりコンクリート張りにすれば、ダムを造って貯める分くらいの水量はカバー出来るはず、とのこと。
 私は、「今本先生のおっしゃる治水メニューには、納得できる。それを河川整備計画の中で国が認可している所は、何処かにあるのか?」と、質問してみた。今本氏の答えは「ない、だから、どこかでやりたい」とのこと。そして、「(今本氏の淀川水系流域委員会仲間で、今は滋賀県知事の)嘉田さんのところを突破口にしたい」とのこと。
 うーん、ちょっぴり悔しいなあ。だって、田中前知事がいれば長野県が突破口となったかもしれないのに・・・。でも、田中前知事の『脱ダム』宣言があり、そのあとの長野県でのあれこれがあったからこそ、長野の失敗を繰り返さないということで滋賀県の嘉田知事があるわけだ。歴史はそうやって一歩一歩前へ進むのだろう。
 田中前知事も脱ダムとは国の補助制度のあり方を変えることだと、よく言っていたが、基本高水による治水ではなく、他の方法による治水を住民が望んだら、それを国は支援するべきなのだ。そしてその方がずっと安上がりで、効果的、自治体の負担も少なくて済むし、国の借金も増えない。
 そういう風にもって行くのは、やはり住民の力と、選挙で政治を変えるしかない。


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