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2007 年 12 月 21 日    
自然復元と持続可能な地域をめざす赤谷(群馬県)、長野県は‥‥
〜さわやか早苗日記468〜
 群馬県みなかみ町新治地区(旧新治村)北部に広がる約1万ヘクタールの国有林「赤谷の森」を、地元住民で組織する赤谷(あかや)プロジェクト地域協議会、林野庁関東森林管理局、日本自然保護協会が協定を結んで、生物多様性の復元と持続的な地域社会づくりをめざしている。利根川の支流、赤谷川上流域一帯で行われることから、「AKAYA(赤谷)プロジェクト」と呼んでいる。
 15、16日と、このプロジェクトで、治山(砂防)ダムの撤去に取り組んでいると聞き、主に川に関する自然保護に取り組むの皆さんと、調査に出かけた。
 渓流生態系における生物多様性の復元のためには、渓流における上下流の連続性の開発が不可欠であり、その最大の阻害要因がダムである。そのため、赤谷プロジェクトでは、エリア内で特に多くの治山ダムが設置されている茂倉沢を、渓流復元のための試験地に提案した。
 この提案を受けて、関東森林管理局では、渓流復元と防災機能の両立を目的とした、新たな治山計画の策定を始めた。策定にあたっては、赤谷プロジェクトの意向を十分反映させることとしているそうだ。

 赤谷の森は、最奥には谷川連峰の山々、谷の中腹にはブナを中心とした自然林、標高の低いところには里山が広がり、森の入口から主稜線までの標高差はおよそ1400m。森の主要な谷には、里山と奥山との境界線を示すように秘湯の一軒宿があり、訪れた人々を癒している。私たちはまず、その中の一つ、法師温泉・長寿館を訪れた。
 建物が沢をまたぐ渡り廊下でつながり、明治28年建てられた鹿鳴館風の大浴場は今も大切に使われている、すばらしい宿だった(写真上)。以前、JRのフルムーンキャンペーンのモデル宿として紹介されたこともあり、平日でも満杯、秘湯の隠れ宿として人気らしい。
 私が驚いたのは、この長寿館の若主人が、赤谷プロジェクト地域協議会の幹事であるということだ。この方だけではない、私たちが泊まった別の一軒宿、川古温泉・浜屋旅館の若主人も協議会の代表幹事なのだ。九州の湯布院温泉で「地域の良さを大事にした持続的なまちづくり」に取り組み、全国に誇れるところにしたのが、地元の老舗旅館の主人たちが中心だったと本で読んだことがある。ここも同じで、そこで業を営む方々が、「生物多様性の復元と持続的な地域社会づくり」という、崇高な取り組みをしていることに、驚いた。
 また、更に驚いたのが、赤谷プロジェクト地域協議会は、みなかみ町新治地区(旧新治村)の皆さんだけではなく、沼田市などからも自然保護に関心のある市民たちが参加している、よそに向かって開かれた協議会だということ。

 私たちが訪れた日に、ちょうど地域協議会メンバーが自然観察調査を行い、長寿館のお風呂で汗を流させてもらった所だったらしく、宿のいろりを囲んで話を聞くことができた。協議会の代表幹事である長寿館の若主人が「(ここの)イヌワシとクマタカと温泉は、自然保護の観点からは同じ(守るべきもの)です」とおっしゃったのが、印象に残った。
 また、赤谷プロジェクトの事務局を努める東京に本部のあるNGO日本自然保護協会のメンバーで、今回私たちを案内してくださったTさんが、「林野庁と地域協議会と自然保護協会がそれぞれ、”やれること”ではなく、”やりたいこと”を持ち込み、3者で協議し、イメージ共有してオリジナルな森林計画を創り実現していくのが、赤谷プロジェクトの特徴です」と説明されたのも、大変印象に残った。
 私はこの12月県議会でも質問で、上高地の自然保護と防災、観光のあり方などについて、国・県・市、観光業者、自然保護市民団体、信大山岳研究所など様々な立場の方達が一堂に会して話し合う場が必要と取り上げたが、村井知事の答えは「話し合いの場は必要ない、国は景観に配慮した防災工事に取り組んでいるから」というものだった。
 上高地も赤谷も国立公園内にある。守るべき自然についての長野県知事の対応や姿勢としては、とても残念だ。
 泊まった川古温泉・浜屋旅館は、温湯番付小結のぬるめの温泉で、湯治客が長期滞在する宿だった。そこで出された夕食のメニューにビックリ、イワナの刺身とイノシシ鍋と鹿肉の煮物、おまけに熊肉まで!(写真上)長野県みたいにマグロの刺身はない、お客が喜ぶ料理でもてなそうとしている。長野県はやっぱり負けちゃうなあ・・・。

 次の日は、雪が降り積もる日となった。その中を撤去する治山ダムを見に行った。林道から1号治山ダムへ下り、そこから茂倉沢を上って壊れた2号治山ダムをめざした。1号ダムのために堆砂した沢や河川敷は歩きやすかった。おまけに積もった雪で石がゴロゴロしているのも感じずに歩けた。
 1号と2号ダムの間に沢の横の斜面に木がなく崩れそうなところがあり、そこには安全策で2.4m程の高さの保全工を試験的に造る予定。真ん中が6.5mほど抜けているコンクリート壁を造り、下流側を木工枕床(木で枠を組み中に石を入れたもの)で補強し、崩れそうな斜面の下は木を組み石を入れた根固め工を設置する。どれも試験的に設置するらしいが、一緒に松本から参加した渓流保護ネットワークの田口康夫さんは、「これくらいのレベルの崩れは問題にする必要はないのではないか?」と言っていた。
 1号ダムから400〜500mほど上流に、穴の空いた高さ5mほどの2号治山ダムが現れた。(写真下左)。昭和30年初期に造られた古いダムで、どうやら穴があいたところを見ると、岩盤の中にダムがしっかり埋め込まれていない。セメントだけ持ってきて、あとは現場の河原の石(大きな石まで)を入れて固めたようなダムだった。
 ダムは全てを撤去するのではなく、古いダムを切って中央を3.5mほど空け、両側に古いダムを挟むような形で70cmと1.4mほどの堰堤を造る予定。
 2号ダムの穴は1X2.5mほどの大きさで、3、4年前の洪水で壊れたらしい。驚いたのはこの穴のおかげで、ダム上流につもっていた土砂の大半が、すでにダム下流に流れ出していること(下のほう右の写真で、上はダムにあいた穴、下は穴から土砂が流れ出しもとに戻りつつある渓流)。
 田口さんたちは、砂防ダムが埋まったと言ってはその上にまたダムを造り続けることをやめるためにも、今ある砂防ダムや治山ダムにスリットの穴をあけることを提案している。今回のこの2号ダムの穴の事例からして、穴をあければ、たまった土砂が流れ出すことが証明されたと言える。

 赤谷プロジェクトも、時にはちょっとした問題も起きるようで、この日も多分林野庁からだろう、「ダム撤去ではなく、改修と言ってほしい」と言ってきてるようだった。でも、いろいろな立場の人たちで、1つ1つ課題を乗り越えて、「生物多様性の復元と持続的な地域社会づくり」を始めた赤谷は、すばらしい。
 「環境との共生」を中期総合計画に掲げた長野県だが、私の上高地の質問に対する知事の答えは、国任せの全く期待できないもの。田口さんは「県なんか飛ばして、国と松本市に一緒にやろうと働きかけていくつもりだ」と言っていた。
 長野県は、赤谷の爪の垢でも煎じて飲んでほしい。
赤谷プロジェクト


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