2009 年
8 月
8 日
リニア中央新幹線は見直すべき、冷静な事前評価が必要ー民主党や新党日本などが掲げる、公共事業の見直しに期待するー
〜さわやか早苗日記517〜
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8月30日の衆議院選挙を控え、各党のマニュフェストが出され、財源問題を含めた実現の可能性などが議論になっている。 教育・福祉・医療・雇用など国民生活を守る施策の充実は、どこの党も掲げるだろうが、一方で財源を確保するためにムダをなくすことなくして、どんなバラ色の政策を言ったところで、絵に描いた餅だ。これまでの自公政権のように、借金して公共事業を行なえば景気が良くなり、税収が上がって福祉に回せるなんて論理は、もはや通用しない。 ムダの削減という点では、たとえば民主党のマニュフェスには、『国民生活にとって必要なものは何か?必要なものは増やし、そうでないものは削る。明快な基準で国の総予算207億円を全面組み替え。(その一つとして、)公共事業は○川辺川ダム、八ツ場ダムは中止。時代に合わない国の大型直轄事業は全面的に見直す。○道路整備は費用対効果を厳密にチェックしたうえで、必要な道路を造る。』と書かれている。 新党日本のマニュフェストには、もっとはっきり、『「脱ダム」宣言は「脱ムダ」宣言。全ての公共事業をゼロ・ベースで見直し「ムダの大掃除」を行なう』と、書かれている。
今度の選挙で政権交代がかなったら、見直して欲しい公共事業の一つが、リニア中央新幹線計画だ。 日本開発銀行調査部長や日本経済研究所専務理事を歴任され、現在明星大学教授でアラバマ大学名誉教授の橋山禮治郎教授は、「リニア中央新幹線は見直すべき、冷静な事前評価が必要」と主張されている。 リニア・市民ネット長野とみどりネット信州、あおぞらで、松本勤労者福祉センターで、7月25日に橋山教授を招き、『リニア中央新幹線計画を考える』という学習会を開いた。
まず、リニア中央新幹線の計画概要は、下記の通り。 路線経路:東京ー名古屋間(290〜340km)、なお名古屋ー大阪間(約210km)計画は未定 速度:500km/h(実際は400〜450km/h) 公表所要速度:40分(平均時速429km、実際は50〜60分) 駆動方式:超電導磁気浮上方式(10cm浮き上がる方式。ドイツで取組み中止になったのは常電導電磁方式で浮き上がりは1cmのため騒音が大きい。前者の方が地震の多い日本には適しているが、建設費は高い) 開業時期:2025年 事業主体:JR東海(申請中) 工事費:5.1兆円(南アルプスを貫くCルートでJRが想定。建設中金利や駅舎は含まず) 建設単価:約180億円/km 財源:全額JR東海自己負担(07/12社内決定) Jr東海のプロジェクト推進の必要性:在来東海道新幹線の輸送力の限界を打破する必要、老朽化・東海地震に対するバイパス路線が必要、大幅な時間短縮が必要
まず、リニア中央新幹線の必要性について、橋山教授は様々な疑問を投げかけた。 ・東海道新幹線の輸送力は限界か?…バブル崩壊後は殆ど横ばい。 ・需要は今後増加するか?…人口減少、高齢化の中で増加は期待できない。 ・在来線改修で長期運休は不可避か?…取り替えが必要なのは橋とトンネルのため、工事区間を限定し乗り換え輸送を行なうなど順次実施すれば、対応策は可能。 ・大幅な時間短縮が本当に望まれているか?誰が望んでいるのか?…利用者の基準判断=受益(満足度)/負担額であり、高い運賃で良いからもっと早く行きたいかを東海道新幹線利用者に聞いてみるべき。JR東海は一度も調査をしていない。実際の失敗例(東京湾横断道路は経営放棄・大赤字、超音速機コンコルドは経営破綻、超高速船テクノ・スーパーライナーは大赤字で運行停止など)と成功例(都市間長距離バス、従来の新幹線)を見るべきで、客観的需要予測が不可欠。
そして、リニアプロジェクト成功に不可欠な3条件あげ、予想される問題点を指摘された。 <条件1>経済性…需要の大きさ、建設コスト、維持運営コスト ・在来新幹線利用者がどれだけシフトするか?料金が高ければ利用者は増えず、巨額な建設費が見込まれるため採算確保が用意でない。在来新幹線との料金差があまりなければ、ドル箱路線の東海道新幹線の収益が大幅減少となる。 ・JR想定工事費総額5.1兆円+建設中金利6000億円+中間駅舎400億円、しかし、10年で貫通させるには掘削機が8台必要で、南アルプス直下の機会投入は不可能であり、工期が延長となれば、更に費用がかさむ。 ・電力費、減価償却費、固定資産税、利息などで開業年度に4300億円の維持運営コストが見込まれるが、JR東海の08年度の利益は1260億円であり、差を埋められるか?もし、需要横ばい(減少)であれば、経営破綻が危ぶまれる。 ・経営悪化寺には、政府が支援することになり、結局国民の税金が投入される。(参考例は、関西国際空港、本四架橋、クライスラー、GMなど)
<条件2>技術的信頼性…リニアの欠点を克服するための、絶対安全性や走行安定性、電磁波防御、省電力化、非常寺対応(地震、火災、停電等)、在来鉄道網との乗り換え利便性 ・大深度地下走行の場合、事故発生時の救出は極めて難しい。車輪のないものをどうやって引っ張り出すのか?研究はしていると言うが、発表はしていない。 ・最新型新幹線と比較して、リニアの優位性が明確だと評価できるか? ・既存の新幹線網とは独立したリニアを特定区間にだけ入れることが、はたして国の将来を踏まえた国策として望ましいか?民間企業を超えた国の政策重要決定事項だ。
<条件3>環境対応性…社会的環境と自然環境への対応性 ・地域住民の要望や地域振興に寄与できるか?既存鉄道とのネットワーク、中間駅と建設費負担などの条件が満たされないと、沿線住民や地方自治体の協力が得られない。 ・異常出水・破砕帯、地震等等への対応(下記、地形地質見学会のブログ参照)、環境破壊を伴わずに廃土処理が出来るか?
最後に、橋山先生は結論として、 「失敗は絶対許されない。リニア中央新幹線は上記3条件を確保することが不可欠であり、一つでも不十分な場合は、必ず失敗する。多くの国民に適正料金で良質なサービスを提供することがJR東海の社会的使命であり、これを十分発揮できるかどうかは、経営者の正しい判断と公益企業体としての持続可能性にかかっている。」 「今必要なことは、目的が正しいか、そのやり方が最適かつ実現可能かという観点で再検討を行なうこと。過去の失敗例からの教訓を読み取ること。広く情報公開し、十分な説明責任を果たすこと。」 「民間企業の投資能力を遥かに超えており、我が国の将来の国土デザインという観点から、政府が責任ある政策決定をするべき」 と述べた上で、 「もし、国家的見地から中央新幹線を建設する必要があると合意された場合には、利用者の利便性、地域振興への寄与、経済性、技術的信頼性、環境保全の観点から、リニアではなく、『最新型新幹線方式で現在の中央東線・西線に平行したルートを、JR東海・JR東日本両社の共同プロジェクトで推進すること』が最善の選択」と、話された。
今度の衆議院選挙で政権をとった責任ある政党は、ぜひ、日本の将来を見据えた橋山先生の話に、丁寧に耳を傾けて欲しい。
大鹿村でリニア現地見学会、地質と地形は? |
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